| 1月
 
   一つの年の終わり、そして新しき始まり。正月は最大の折月、節月の行事です。 五穀豊穣をもたらす祭神様を迎え、豊作を祈願するものです。
 ご先祖様が残してくださった大切なしきたりでもあり、家族揃って新しい年の初めを迎えられることを喜び、また感謝しつつ新たな一年の計を誓うものです。
 この新しい年の始めに、一年間の無病息災や商売繁盛などを祈願するために、社寺へお参りするのもいいでしょう。初詣は松の内に済ませましょう。
 
 ☆門松
 昔から松に限らず、榊、柊、椿などの常緑樹にしめ縄を張ったものです。
 今は「松飾り」「松迎え」として、正月にやってくる祭神様を迎える役目を持っています。
 通常は12月28日までに飾るもので、29日は「苦立て」、31日は「一夜飾り」といって、この日に立てるのは避けた方がよさそうです。
 
 ☆しめ飾り
 新しいわらを使った飾りで、神様を迎えて祭る清浄な場所であることを示す、占標(シメ)のことを言います。
 また橙を飾りますが「家が代々繁栄しますように」との願いで、裏白を飾るのは「後ろ暗いところのないように」との願いです。おなじみの昆布は「よろこんぶ」とのことで、このようにしめ飾り全体で一家の幸せを願ったのです。
 門松と一緒に12月28日までに飾ります。
 
 ☆床飾りと鏡餅
 鏡餅は正月飾りの中でも当たり前になってきました。正式には三方の上に半紙を乗せ、裏白を敷いてから餅の大小を二つを重ねます。昆布は前に垂らし、上にはゆずり葉を敷いてから、橙を乗せます。
 この鏡餅を置いて床飾りをするのですが、中心には掛け軸をかけます。柄としては、七福神、鶴亀、日の出、松竹梅や干支が良いでしょう。
 ☆祝い膳 おせち料理のことですが、おせちの「せち」は「節」のことです。
 元々は1月1日(人日)、3月3日(上巳)、5月5日(端午)、7月7日(七夕)、9月9日(重陽)の五節句の日に神様にお供えした料理が「おせち料理」と呼ばれたのです。このうちで一年の初めの大事な節目に「おせち」の意味が強く残ってきたようです。材料にも縁起をかついだものが多く残っています。
 
 ・ごまめ−五万米と呼び五穀豊穣を願った。
 ・数の子−子孫繁栄
 ・黒豆−まめに働く
 ・栗−黄金の固まり
 ・昆布−よろこぶ
 
 なお重箱は外側が黒、内側が朱塗りで四段重ねが正式で、一の重には「祝い肴」、二の重には「口取り」、三の重には「焼き物」、四の重には「煮物」を入れます。それに料理の数は奇数になるようにするそうです。
 
 
 ☆祝い箸
 正月の祝い膳を食べる時に使う箸のことです。白木の柳箸で長寿を願い、常に白く身の清さをあらわしています。それぞれに家族の名前を書いて三が日に使います。
 
 ☆暮れぼろ
 今はこんな言葉も使われなくなりましたが、昔は正月が一年の初めで、何でも新しくしてスタートするものでした。着るものも新調し、下駄や草履ももちろん、着慣れたものでも洗張りして仕立て直したものです。そのため12月の歳の暮には、着古しのきもので失礼しますと「暮れぼろ」で過ごさせてもらったものです。
 この暮れぼろ故に新しい年を迎える人の気持ちも、今では考えられないほど、新鮮で神々しく大事なものであったと思われます。
 ここ最近では、昔私たちが子供の頃に比べても豊かになり過ぎて、少しも新しいことへの感謝がなくなって残念なことです。
 
 ☆お屠蘇
 中国伝来の薬草酒が由来で、平安時代の宮中行事から正月に飲む習慣となったそうです。「屠」は退治するという意味を、「蘇」は邪気という意味を持ち、邪気を払い寿命を延ばす意味で飲まれたようです。
 昔は、桔梗、肉桂、防風、山椒などの粉末を調合し、絹の袋に入れて、大晦日の夜から酒やみりんに浸しておきました。
 飲み方は大中小、三重ねの杯を使い、年齢の若い順に小さい杯から、いつまでも若々しくとの願いを込めつつ飲むそうです。
 
 ☆雑煮
 正月の雑煮は宮中で元旦に開かれる「御薬・歯固(ミクスリ・ハガタメ)の儀」に由来しているそうです。御薬とはお屠蘇のことで、歯固とは餅、押鮎、鹿の肉で歯(年齢)を伸ばす長命祈願の儀式です。
 また、大晦日の夜に年神様へお供えした供物を、元旦の朝に下げて皆で食べるしきたりがあり、この二つが合体したものが今の雑煮だそうです。
 ☆七草がゆ 一月七日の朝には七種類の野草を入れたおかゆを食べ、万病と邪気を払うのです。また、正月で疲れた胃腸を癒してやるという目的もあるようです。
 ちなみに七草とは、せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろです。
 
 ☆鏡開き
 正月の間飾っておいた鏡餅を下げ、食べることです。もともと武家社会の間の習慣で、餅を切るといわずに割るといいます。
 
 ☆女正月
 普通1月15日は成人式と思いますが、実は男正月に対して女正月といい、暮れから正月にかけて、忙しく働いた家庭の主婦を一段落した15日頃に改めて祝う日でもあります。
 この日はすべての家事を離れ、女たちが集まって大いに楽しむ習慣がありました。
 
 ☆二十日正月
 1月20日をのことで、正月行事の締めくくりに、正月の間使用したものを手入れししまう日です。
 
 
  参考
 
   ★装い 男性は紬のアンサンブルなどが良いでしょう。十日町、結城、大島など、軽くて暖かいし、威風堂々とした趣きがあります。
 女性は、訪問着、色無地、小紋を行く先にあわせてコーディネイトしましょう。紬も洒落てますね。若い方なら黄八丈や振袖もいいですね。
 
 特にこの時期は、きものを着る機会にあふれています。できる限り袖を通して、「伝統のよさ」「日本の心」を肌で感じましょう。
 |